教育実践学研究所プレスリリ-ス 2026年10月25日


コハクの中の約9000万年前の新種のハエ化石を報告

―世界で3例目、日本では最古の新種のハエ化石―

中生代白亜紀の約9千万年前のコハクの中に含まれていたハエの化石がこのたび新種として報告されました。化石は福島県いわき市付近に分布する双葉層群玉山層から地元の鈴木千里氏が発見したもので福島県立博物館に保管されていたものです。この化石は昆虫化石の専門家である教育実践学研究所長(東京学芸大学非常勤講師)の相場博明博士によって研究され、2026年10月22日に、日本古生物学会の国際誌Paleontological Researchのオンライン版で公開されました。 化石は体長がわずか1.2mmと小さな成虫ですが、全身が保存されており、今までのいわきコハクの中の昆虫化石の中ではもっとも保存状態が良く、まるで生きているように見えるものでした。 詳細な観察の結果、この化石はアシナガバエ科のアベナフォラ(Avenaphora)属の新種に同定されました。アベナフォラ属は絶滅した属であり、現在まで世界から報告されているのは2種のみです。一つはレバノンの白亜紀前期(約1億3000万年前)のものと、もう一つはフランスの白亜紀後期(約8500万年前)のものです。今回報告されたものは、それらとは明らかに違う形態であり、世界でこの属として3例目の新種とされました。 アベナフォラ属は、アシナガバエ科の中ではもっとも原始的でその初期進化を探る上で重要な位置を占めるものとされています。今回の報告は、その謎を探る上での貴重な報告となります。 また、今回の化石は、後脚腿節に顕著な12本のトゲを持っているのが大きな特徴でした。これは、オスに見られる性的二型(例としてカブトムシやクワガタのオスの角が大きいなど)とよばれるもので、この種は独特の交尾行動をとっていたことが示唆されました。このことは、多様で特殊化した交尾戦略が白亜紀までに既に進化していたことを示すさらなる証拠となりました。 日本各地からこれまで多くのハエの化石は産出していました。しかし、新種として記載されたものは、那須塩原市からの中期更新世(約30万年前)のものが唯一でした。今回の報告は、それを大きく遡り、日本最古の新種のハエ化石となります。(国際誌Paleontological Researchのオンライン版)

まるで生きているような状態で保存された9000万年前のコハクの中のハエ化石

標本の価値・重要性
ハエの化石は、化石としては比較的多く産出します。とくに、日本各地の湖の堆積物などからは多くの標本が産出しています。ただし、その多くは翅一枚などの不完全なものが多く、なかなか同定するのが困難です。さらにハエの現生種は多様化しており、現生種さえも多くの未記載種が存在するという現状です。よって、ハエ化石を種レベルまで同定することは非常に難しくなっています。日本各地から産出した多くのハエ化石も、残念ながらそのほとんどが名前をつけられないで眠っているというのが現状です。その中で唯一、新種として報告されたのが那須塩原市の中期更新世(約30万年前)のカトウクロバネキノコバエ(Sciara katoi Aiba and Menzel, 2026)の化石です。この化石は、例外的に保存が良く、体表面の細かい毛や模様が残されており、また多くの標本が揃っていたことが新種同定の決め手となりました。 コハクの中に含まれた昆虫化石は、立体的に保存され、触角の詳細や体表面の細かい構造、交尾器なども見事に保存されることがあり、多くの情報を得ることが可能となり、古生物学的重要な資料となっています。今回の化石は、そのコハクの中にほぼ完全な状態で保存されたものです。よって、そこから多くの情報を得ることが出来、新種同定に結びつきました。 また、いわきコハクの年代であるコニアシアン(約9千万年前)の時代のものは世界的にほとんど見つかっていない空白の時代です。よって、いわきコハクから発見された昆虫化石の研究は、昆虫の進化を探る上での重要なピースであり、世界からも注目されています。



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